4. ノラグマに逢った日 

1999年10月10日〜11日

奥多摩

私は東京育ちである。小学生の頃から東京都の一番はしにある雲取山が気になっていた。平成10年と11年、体育の日に行ってきた。

2回とも日原からのコースで、人通りはほとんどない。メインのコースへ行くバスより日原行きの方が駅から早く出たからだ。雲取山方面なら、たいして違いはないかと甘い考えもあった。この時はガイドブックさえ買っていなかったし、読んでもいなかった。テレビの番組は2回見た。

ちなみに、1回目の時は日帰りでちょっと歩いて来る、くらいの軽いつもりで来たのだ。北アルプスと比べて、いかに地元の山を軽く考えていたことか。
おかげで当時公衆電話のなかった山小屋で、初めて無断外泊をしてしまったという苦い経験もあった。山へ行って連絡なしなんて、家族にいらぬ心配をかけてしまった。

奥多摩の駅を出ると”クマに注意”の看板がある。これは、2回目に行った時の話である。

 

日原川

一人で山道を歩いていると、うしろからカランカランとにぎやかな音が聞こえてきた。 すず、カウベル、カップなどをブラ下げたにいちゃんだ。
”いい音しますね”と言うと、”去年ここでクマに会ってますから”との事。
”えー、いるんですかー”、”いますよ、この撃退スプレーは一万円します”
”いっしょにくっついてっていいですかー”、”あ、どうぞ”
 

雲取山頂から富士山

いっしょについて行く。”これはシカのフンですね”とか、けっこうくわしい。
と、その彼が立ち止まって笹ヤブの下の方を静かに見ている。
”あれ、クマですよ”
なんと、15mほど下で、まっくろい顔に耳をキッと立てて、こっちを見ているではないか!
もー、びっくり。クマって、オリの中に入っているか、ヌイグルミであって、
生グマじゃないー。ノラグマ、キライー!
 

御来光

なるべく静かにその場をはなれる。”クマにおそわれたら、どーしたらいーんですかー”
”リュックのある背中をむけて、小さくうずくまれば、足かじられるくらいで
内臓までは食われないですみますよ”という話。
いつもはベビーサラミを食べながら歩く私だが、この時ばかりは飲まず食わず 必死でにいちゃんの後ろをついて行ったものである。ありがたや。一人だったらと思うとゾッとする。
やっぱり、メインの登山道を行くべし。
 

雲取山荘

5時間かかって、ようやく稜線。雲取山荘は今年の夏、改築されたばかりで、とってもキレイ。
去年は百人雑魚寝部屋で灯りはランプだけだったけど。
フトンもトレーもみんな新品で気持ち良い。山荘のオヤジさんの話も面白い。
 

朝の富士山

前回も今回も御来光が素晴らしく、お祭りへの下山道も、途中までずっと富士山が見える。もう、ゴッキゲン。整備されてて歩きやすい4時間の下り。
ウラからのルートを通らなければ、いいコースだと思う。